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くみあいニュース

1999年度第21号
2000年4月6日


島根大学教職員組合広報部
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■全大教シンポジウム参加報告

 全大教シンポジウム「日本の学術・文化の充実を−国立大学の独立行政法人化問題を考える」に参加してきましたので報告します。なお、この報告は会場でのメモによるものであり、詳細は後日の全大教新聞をご覧下さい。

 シンポジウムは3月5日学士会館にて50単組代表に他団体・院生などを含め145名の参加でおこなわれました。4名のパネラーの発言はそれぞれに切り口が異なっていてとても参考になりました。またフロアーからの発言も全院協議長の大学審路線のなかで院生の勉学条件が悪化していること、日教組の大学が3種類になれば高校もそれに続くことになる、などこの問題の本質が社会全体を視野にいれて討論されました。以下、パネラーの基調発言を紹介します。

 阿部謹也氏(共立女子大学学長、前一橋大学学長)
 全国10あまりの大学から呼ばれて話をしてきた。この間の運動は大管法の時と比べて低調である。大学院重点化した大学からの反対声明はひとつも無く、学生・国民からの反対も弱い。知らないからというだけではないだろう。特例措置に対するマスコミの報道のなかで「これならば」という安堵感が広がっているのではないか。
 地方大学は、その地域の人々が「この大学を残してほしい」と思うかどうかにかかっている。むしろ問題は東京などのマイナーな大学だ。
 国民がこの問題に関心を示していないのはなぜか?多くの国民が、就職率はともかく、教育内容・研究内容にあまり関心がない。真の意味で国民に役に立つ研究が必要だ。研究者が育っていく過程を自分の例で考えると、それは「しずく」の研究であった。「しずく」が滴るおおもとについて、もっと語られなければならない。「自由とはなにか」「民主主義とはなにか」「平等とはなにか」等など。
 旧態依然たる学問を継承する学生はわずかだ。日本の学問全体・大学全体がタックスペイヤーに対して責任をとれていない。

 伊藤谷生氏(千葉大・理)
 (独法化反対の運動の広がりを紹介したのち)真の危機は大学が自律的な変革の思想とプログラムを持っていないことである、として旭岡氏から引用「日本の大学は、時代の先端を担う気力もなく、時代の正当で健全な批判者としての存在でもない」(科学1999年12月号)。
 大学が「物取り」にはしった結果として、教員構成で上位級が増え、大学院重点化、任期制、定削の職員への押し付け、講座制の解体などが起こり、そのしわよせは若手研究者とその予備軍、「支援」職員に集中している。
 対抗的変革プログラム作成が急務であり、真摯な自己批判的総括がその出発点だ。競争原理、外部評価、中央集権化、大学の中軸は教員とする見方などは「迷信」にすぎない。
 滝川事件などにおける闘いが大学の自治と教特法をつくり50年間その遺産のうえに大学はあった。では独法化との闘いはどんな遺産を次の50年にのこすのか?

 藤森 研氏(朝日新聞論説委員)
 国立大学の独法化は出自がうさんくさい。しかし法人化一般を否定するものではない。なぜなら、大学が長い目でみたとき社会に役立っているかについて不満があるから。90年代後半にそれが顕在化してきたのは、底層の流れとして国民主権が実質化してきつつあるからだろう。新潟巻町の住民投票や阪神大震災後の市民立法の動きはそれを示す。大学はいま底層から問われているのだ。表面に規制緩和の皮を被っていても、それは国民の基本的要求を反映している。
 国民は大学を教育機関としてみている。日本社会でジニ係数が大きくなり階層変容の兆しがあらわれているいま、戦後社会の「よさ」が崩れていっている。学術・文化の危機もそうだが、私としては「大学人は大学が階層固定化の道具なのか、それとも階層を上り下りするハシゴなのかを考えてきたのか」を問いたい。学歴ではなく、学校暦の輪切りの規定力のもとで、初等・中等教育が変化してきている。いま大学が変わらなければミゼラブルな状況が生じるかもしれない。

 和田 肇氏(名古屋大・法、全大教委員長)
 大学紛争以来の最大の盛り上がりをみせている。しかし、自治のあり方が問われていない−学生・職員について明確にし、大学人の自己責任を確認して、21世紀にむけた新しいパラダイムを創ろう。壊れてしまったものの上に新しいものは建たない。10年間の「改革」を総括し、新しい大学を。

 以上です。中身の濃い議論に帰りの飛行機の中では寝てしまいました。
                                (書記長 星川)


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