1999年10月15日
島根大学長
吉 川 通 彦 殿
島根大学教職員組合
中央執行委員会
島根大学における「日の丸」掲揚に反対する要望書
去る10月12日、貴職におかれましては、島根大学創立50周年記念行事に際して、前言をひるがえし「日の丸」掲揚を行うことを決定されたと聞きました。
今回の決定変更は、文部省からの圧力の下で「今後の島根大学にとって有利に」という配慮があったと推察いたします。しかし、この決定は重大な問題を含んでおります。
従来大学は、自主・自律の運営を目指してきました。どのような事態に遭遇しようとも、この指針を変更してはなりません。島根大学の意思決定の最高責任者である貴職が、大学内部の意見集約という正規のプロセスによらず、外部圧力に屈した今回の決定は、自ら自主・自律を放棄し、今後学内外での正常な議論を妨げる重大な前例になることを意味しています。
先般、政府は「日の丸・君が代」を国旗・国歌として法制化しました。しかし、国民の中には、侵略と悲劇の象徴であった「君が代・日の丸」を法制化することへの可否を含め、多様な意見があります。私たちは,今回の法制化に至る議論は、これらの点を充分考慮したものとは言い難く、将来に禍根を残す決定であったと認識しております。
また、政府は、当初「法制化と実施は一体のものではなく、教育現場での実施は各々の自由である」旨の発言をしていました。しかし、法制化以前から頻発している教育現場における混乱は、強制的に実施を迫ったことに起因するものであり、今回の決定は、この欺瞞に満ちた政府の態度に屈服し、さらにはその欺瞞を肯定すること以外の何ものでもありません。
このことはさらに、大学の基本理念であるべき、学問・思想の自由の侵害という重大な問題を含んでいます。
私たちは、島根大学の自主・自律、学問・思想の自由を尊重する立場から、正常な学内議論に基づかない今回の決定に強く抗議するとともに、「日の丸・君が代」の強制がいかなる場所でも起こることがないよう、強く要望いたします。
|