島根大学教職員組合ホームページへ戻る


2001年12月19日

島根大学

 学長 吉川通彦 殿

 総務課長 伊藤嘉彦 殿

島根大学教職員組合

中央執行委員長 古用哲夫

要求書

貴職におかれましては、教職員の労働環境の改善に不断の努力をいただきありがとうございます。

さて、ご承知のように、本年6月14日の国立大学長会議において、「大学(国立大学)の構造改革の方針」が明らかにされました。そこでは、各大学や分野ごとの再編・統合、教員養成系などの規模縮小や再編、および単科大学の他大学との統合等の方針(スクラップ・アンド・ビルドで活性化)、さらには、競争的資金配分による国公私「トップ30」構想が明示されています。本学においても、平成15年10月の島根医科大学との統合にむけ拡大将来計画委員会を中心とした各検討組織が整備され、準備が進められている現状です。

このような激動とも言える現状に鑑み、我々教職員の今後の身分等に関連する重要な諸事項に関して要求いたします。よろしくご対処いただきますようお願いいたします。

1.国立大学の法人化ならびに再編・統合に関する問題

(1)本学の「大学再編・統合に関する検討経過及び検討結果(8/29教育組織検討委員会)」では、統合に関わるメリット・デメリットが指摘してあります。デメリットの一つとして、「事務部の分散に伴う事務手続きの複雑化」があげられ、さらに「新しい状況に相応し、事務組織の再編等の対応策を講ずることが求められる」と述べてあります。医大との統合による「新しい状況に相応し、事務組織の再編等の対応策」としてどのような再編案があるのか、お聞かせ下さい。

(2)その対応策では、事務組織定員(常勤・非常勤)の削減につながる可能性はないのでしょうか。さらには、削減が、非常勤職員に偏る可能性はないのでしょうか。定員削減にあてられた現職員(常勤・非常勤)の身分保障についてのお考えをお聞かせ下さい。

(3)また、メリットの一つとして、「異なる分野との融合連携による研究基盤の強化と学際的研究の発展」があげられ、医科大の生命科学諸分野と島大の生物資源科学部・生命工学科等諸分野間、また、福祉向上に関する研究分野と保健教育・普及に関する研究分野間など、これら諸分野から成る新分野の例が列挙されています。また、「器機分析センター(島大)」と「附属実験実習センター(医大)」では、「医大の機能を残す方向」が、「情報処理センター(島大)」と「情報ネットワークセンター(医大)」に関しては、山梨と同様な方向で「新たな形態を検討」とあります(島根大学・島根医科大学統合協議会重複組織検討分科会」(11/9の確認・決定事項)。

「異なる分野との融合連携」とは、研究プロジェクト等、現存の組織を保持したままでの共同研究体制を意味しているのでしょうか、あるいは、既存の組織の再編を念頭においたものでしょうか。現在、どのような研究・教育組織(各種センターを含む)の再編案があるのかお聞かせ下さい。また、その再編案によって、現在の教官定員が削減される可能性についてもお答え下さい。

(4)学長は、松江国際文化協会主催の講演会で、遠山プランに盛り込まれた改革内容を「目的・理念のない改革」と指摘されています(山陰中央新報10/28付)。市民公開の場でのこのような批判を、組合では高く評価しております。一方、学長は、朝日新聞社のアンケートにおいて(11/5付)、「トップ30育成方針に賛成か反対か」の問には、「△(どちらとも言えない)」、「トップ30に入りそうな専攻分野はあるか」の問には、「○(ある)」と回答されています。「トップ30構想」および「法人化後の定員削減問題」に関する学長の見解や方針等についてお尋ねします。

トップ30構想に関して、現在どのような見解をお持ちなのでしょうか。さらに、どのような具体的構想があるのかもお聞かせ下さい。

(5)また、その構想は、大学の再編問題にどのように今後関わっていくのでしょうか。たとえば、岡山大学では、法人化後の定員削減およびトップ30構想に対処するため、文系、医科歯科系、工学系という3学類型の再編案がある、山口大学では、学長案として、生命科学部(理・農学系)と総合的文系学部(人文・経済・教育)の再編案があると聞いております(「全国大学高専教職員組合定期大会(10/13:東京)」および「中四国大学高専教職員組合教育学部懇談会(11/17:岡山)。本学において、法人化後の定員削減への対処案やスクラップ・アンド・ビルド案として、たとえば、法文と教育を再編・統合する案等はあるのでしょうか、お聞かせ下さい。

(6)次に、教育学部の再編・統合問題についてお聞きします。新聞・雑誌等を通じ曖昧な情報が流れる中、教育学部では、教職員はもとより、学生・院生までも不安を感じ、長期的展望をもった研究・教育に落ち着いて取り組みにくい現状にあります。この問題に関するプランをお持ちでしたらお聞かせ下さい。

(7)教育学部の再編・統合問題は、教育学部のみの問題ではなく、大学全体の問題だと言えます。教育学部の再編・統合問題に関して、全学の委員会等で検討されている事項がありましたらその内容をお聞かせ下さい。今後、これら本学での検討内容のみならず、その背景にある文科省や国大協からの情報も速やかに全学構成員に公開されるよう要求いたします。

(8)この問題においては、当事者である教育学部構成員の意志を尊重することは当然のことながら、市民および教育学部と関連の深い地方行政組織(教育委員会や福祉行政組織など)の意見が反映される必要があるとともに、これらからの社会的支持も重要だと考えます。学長自らが、教員養成学部の存続を県に陳情したという福井大学の例もあります(福井新聞:12/10付)。この点についてご意見やお考えをお聞かせ下さい。

(9)9/27の「新しい『国立大学法人』像について」(中間報告)では、「国際競争に対応し得る教員の多様性・流動性の拡大」のために、「実施方法の工夫等を中期計画の中で明確化する」、「任期制ポストへの異動を促進するような給与体系を設ける」など、今後の積極的な「任期制」および「任期付教職員の採用制度」の導入について述べられています。本学においても、特定の分野・領域等で導入されるのでしょうか、また、ゆくゆくは、全ての学部・学科等においての導入が奨励されるのでしょうか、お答え下さい。

(10)1997年制定の「大学の教員等の任期に関する法律」によれば、先端的特定の分野や職種に関する、当該大学の判断で導入する選択・限定的任期制である(第4条)とされています。また、衆参両院において、「任期制の導入によって学問の自由および大学自治の尊重を担保している教員の身分保障の精神が損なわれることがないように充分配慮すること」が指摘され、さらに「いやしくも、大学に対して、任期制の導入を当該大学の教育研究条件の整備支援の条件とする誘導等を行わないこと」が付帯して決議(平成9年5月9日)されています。

このような点に鑑み、上記「新しい『国立大学法人』像について」(中間報告)における任期制の導入は、任期制への誘導であり、「大学の教員等の任期に関する法律」に違反していると、全国大学高専教職員組合では解釈しています(10/29:全国大学高専教職員組合が「中間報告」に対する意見書としてこの点も指摘し文部科学省に提出)。

本学での導入に関しては、教職員の生活基盤を奪いかねない不安定的雇用を無原則に取り入れることなく、上記「大学の教員等の任期に関する法律」および衆参両院における付帯決議を前提に、熟慮導入していただくよう要求いたします。

(11)「大学再編・統合に関するまとめ」(8/29教育研究組織検討専門委員会)では、再編・統合問題の総合評価における問題点として、「再編・統合の特殊事情として存在する病院の長期借入金債務の償還について方針が明確にされていない点」が指摘してあり、「今後の検討結果を注視しておく必要」性が指摘されています。平成16年度からの国立大学の法人化を前に、この点は、大学の財政運営に関わる大きな問題だと思われます。この点に関して、統合あるいは法人化後、個々の大学が長期借入金を独自に償還する制度になる可能性はないのか、お聞かせ下さい。

(12)「大学再編・統合に関するまとめ」(8/29教育研究組織検討専門委員会)に、「両大学構成員の民主的な合意形成に基づいて慎重に進められるべき」とあります。このような民主的合意の形成のためには、「構成員に対する再編・統合問題あるいは、法人化問題に関わる情報の公開」が必須と思われます。各種検討委員会の審議結果の大学HP上での公開や各学部教授会等での公開のみならず、今後必要に応じて「大学構成員を対象としたヒアリング」等の場を設けられることを要求いたします。

2.教職員の待遇改善・労働環境に関する問題

(1)「学務事務一元化」体制がスタートして試行期間も含めて1年以上が経過しましたが、さまざまな問題が生じてきています。部署の違いによる業務の過重、配置のアンバランス、分担の不明確さ、業務の不整合、協力体制の不備などが表れています。部署によっては超過勤務、ストレスの過多も表れています。(資料「くみあい教職員意識調査2001年」参照)。組合としては、庶務系の一元化も含めて全学的な事務体制についての見直しが必要だと考えています。この件についてどのように認識しておられるのか、問題点の改善のためにどのような具体的方策を考えておられるのか、お答え下さい。

(2)「大学法人」に移行した場合、大学職員が「定員法」の対象外となる可能性があります。中期計画の中では「大学法人」の人件費も報告対象となりますが、既に大学の日常業務にとって欠かせない存在となっている定員外職員に関しての大学としてのお考えをお聞かせ下さい。

(3)「大学法人」への移行時期において、年度単位の契約である定員外職員の雇用の更新は確実に保証されるべきものだと思います。この点に関してのお考えをお聞かせ下さい。

(4)時間雇用職員に対してのボーナス支給を要求いたします。

(5)「特例一時金」に関して、人事院は「給与法第22条第2項の『常勤を要しない職員については、各庁の長、常勤の職員の給与との権衡を考慮し、予算の範囲内で、給与を支給する。』に基づき、「特例一時金」相当の支給は可能である。」との説明を行っています。これに基づき、島根大学でも非常勤職員に対する「特例一時金」の支給を要求いたします。

(6)再任用制度に関してお聞きします。組合としては再任用の希望者は原則として再任用すべきだと考えます。現在大学での対象者、および対象者の退職後再任用希望の有無について、その実態に関してお答え下さい。また、再任用制度に対する島根大学の運用方針をお答え下さい。

(7)近年中途採用者がめだちますが、このポストは4月以降新たについたものでしょうか。それとも空ポストでしょうか。空ポストだとすればなぜ4月に採用できなかったのか。現在いくつの空ポストがあるのか。定員削減との関係も含めて補充する時期をお答え下さい。

(8)新規採用者の研修についてお聞きします。欠員の補充として配置された新規採用者が、研修で3ヶ月不補充になる制度は合理的でありません。殊に中途採用者の研修は、その部署にとってさらに不補充状態が続くことになります。現在行われている研修の見直しを要求します。特に、研修の時期は比較的業務の少ない時期に行うようにし、受け入れる部署の意向にも充分配慮するよう要求いたします。

3.教育・研究条件に関する問題

(1)大学審答申および文部省による予算配分方法の変更に伴い、昨年度より「競争的かつ重点的予算配分方式」が取り入れられています。しかし、組合が実施した昨年のアンケートによれば、「競争的かつ重点的予算配分方式」が有効に機能するのか否かについて、疑問あるいは否定的見解が少なからず見受けられました。昨年組合では学長裁量経費に提案されたプロジェクトについて、採択および不採択の理由を開示するよう要求いたしましたが、学長からは「全て公表するのはどうかと思う」とのご回答しか頂けませんでした。プロジェクトの採択に当たっては、提案の意図、影響度・貢献度、実現性、緊急度または継続性、経費構成の妥当性などの点について評価を行い、点数化の上で上位のものについてその内容を精査し決定されているようですが、科研費でも希望すれば第1段審査の結果を知ることが出来る現在、情報公開を更に一歩進め、プロジェクトの責任者が求めれば評価点を提示出来るように、また学内向けホームページには採択金額も含めた形で開示していただくよう要求いたします。

また、本年度より学内広報が廃止されました。最終号の「お知らせ」には「今後は,島根大学ホームページで各種情報を随時提供していく所存です」とは書いてありますが、科研費の採択情報等を含む多くの情報が公開されなくなっておりますので、従前通り開示していただくよう要求いたします。

(2)学内の情報化の進展に伴い、物品請求をはじめ学生の成績の入力、学生の履修手続き等も学内LANを利用して行うように変更されつつあります。また、職員録、学内電話番号一覧など従来印刷媒体として配布されていた資料も電子化され、ホームページ内に掲載されるようになりました。しかしながら、現在学外からはこれら学内向けホームページを閲覧出来ない状況となっています。このため、出張先などから学内へ電話をかけたり、電子メールを送る際に不自由を感じるとの意見が学内からあがっております。住所録等印刷物の発行および、学外からでも、島根大学の教職員に限り学内向けホームページを閲覧したり、物品請求が出来るように配慮していただくよう要求いたします。

また、ホームページでの届出が可能ではない「出張・研修願い」や「それらの報告」についてもホームページでの届出ができるように要求いたします。

(3)現在東京以遠への出張については、航空機のみの使用に限定し、出張後航空券の半券の提出を要求するシステムとなっています。親法では「航空券を使って出張してもよい」となっており、また組合の調査によればJR等も使える対応をしている中国地方の大学も数校あることから、島根大学においてもこのように柔軟性のある対応をしていただくよう要求いたします。