くみあいホームページへ

2000年12月25日

島根大学

 学長     吉川通彦 殿

 総務課長  伊藤憙彦 殿

島根大学教職員組合

中央執行委員長 谷口憲治

要求書

貴職におかれましては,教職員の労働環境の改善に不断のご努力をいただきありがとうございます。

さて,国立大学独立行政法人化の動き,大学審答申に絡んだ「大学改革」・「教育改革」の実施,教育・研究機能を麻痺させる継続的かつ大規模な定員削減,のなかで,島根大学も構成員の総力を上げて島根大学将来構想の構築,構成員の納得しうる大学運営および労働環境の実現に努力する必要があります。学長は,各種委員会等を通じて,あるいは,大学ホームページ等で,構成員の意見・要求を把握する取り組みをされておられますが,組合では直接教職員の意見を聞くために,本年10月末から11月はじめにかけて「くみあい教職員意識調査2000」を実施しました。短期間ではありましたが,255名からの回答を得ました。この中には,非組合員からの回答も多数含まれております。「総合的に見て島根大学はなかなかいい大学だ」を肯定する方は35%程度(保留33%,否定32%)ですが,77%の方が「私たちの努力次第でこの大学はもっとよくなる」と考え,81%の方が「この大学をよくするために,いろいろ努力したい」と考えています。45%の方が「できればずっと島根大学で働いていたい」のですが,70%の方が「島根大学の未来は明るい」に否定的です。このように,本アンケート結果には,島根大学の現状改善・将来構想作成に自らの意見・希望を反映させて,島根大学をもっと良くして明るい将来の見通しを得たいと言う教職員の気持ちがこめられています。

上記アンケート結果とこの間組合で検討してきた事項に基づいて,以下の諸点を要求いたしますので,よろしく対処いただきますようお願いいたします。

I 独立行政法化問題

I-1 東京大学では平成12年10月3日付けで「国立大学の法人化について−『国立大学制度研究会』(東京大学)報告書」,名古屋大学では平成12年9月7日付けで「名古屋大学の法人化と大学運営について」が公表されて,いずれも独立行政法人化の方向(東大は「通則法」に基づかない案であることを明記)で進むべきであることを結論付けています。国大協は,「通則法」による独立行政法人化に反対すると言う立場を堅持しつつ,独立行政法人通則法の枠内にとらわれずに大学制度のあり方を検討し,その内容を文部省の調査検討会議の議論に積極的に反映させていく方向としているとのことです。平成12年1月18日の学長交渉の際に,学長は組合からの「独法化に対抗する,別途の設置形態を検討すべき」という要求に対して,「本学独自には検討していない。全国的に,国立大学をどういう設置形態にすべきかと言う議論の依頼もないし,予定もない」と返答されています。他方,島根大学でも各種委員会で独立行政法人化の問題については検討されていると言う話も聞きます。学長は,前回学長交渉以後,情勢をどう判断し,どう対処してこられたのか,ご返答ください。

I-2 アンケート結果では「国立大学を行政の一機関ではなく,独立した法人にする」に38%の方が肯定していますが,他方,「島根大学の法人化」については「通則法に基づく法人化」を肯定するのは6%にすぎず,「通則法によるのはまずい」が33%,「現状どおりがいい」が28%です。また,「独立行政法人とは別類型の,大学にふさわしい法人(たとえば学術公法人など)の制度化」を肯定する方は,79%に達します。具体的には,通則法による独立行政法人化が行われた場合,「研究費」,「研究時間」,「教育条件(教室・備品など)」,「教育条件(学費)」が悪くなるとの回答が61−78%に達します。また,「意思決定の民主性(予算)」(良い方向へ:16.1%,悪い方向へ:40.9%,不明:43.0%)および「主務官庁からの独立性」(良い方向へ:24.6%,悪い方向へ:36.5%,不明:38.9%)についても約40%の方が現状より悪い方向に変化すると考えています。したがって,前回交渉で組合が要求した「独法化に対抗する,別途の設置形態の検討」が多くの教職員の願いでもあると考えます。

1)学長は多くの教職員が望む「独立行政法人とは別類型の,大学にふさわしい法人(たとえば学術公法人など)の制度化」についてはどのような見解を持ちますか。

2)島根大学の将来構想について,国大協の方針に合致する「独法化に対抗する,別途の設置形態の検討」を再度組合から要求します。

I-3 東京工業大学・一ツ橋大学・東京芸術大学などで単位互換を行うなど,大学の統廃合をにらんでのことではないかと思う動きがマスコミを騒がすような状況になってきています。週刊誌上でも,どこそこの規模の大学以下は取り潰しあるいは合併吸収されるなどの記事が多くなってきています。島根大学としてのあり方を学内で十分かつ迅速に検討しつつ,他大学との連携強化についても手を打つ必要があると思われますが,この間どういう検討と対処をしてこられたか,ご返答をねがいます。

I-4 島根大学として独立行政法人化された場合に大学として成り立つか否かの検討も必要と思われます。たとえば,法人としての経費獲得・運用のやり方は大学における経費の運用の仕方と本質的に合わないものであるという見解もありますし,事務機構については文部省も明確な見通しを持っておらず,全大教に案があったら提示してほしいとの要請もあったそうです。このように,実際に国立大学を独立行政法人化した場合にどういうことになるのか具体的検討をすることによって,独立行政法人化が可能なのか否かが明らかになる可能性があります。このような検討を行う体制の確立が必要です。国立大学が独立行政法人化された場合,組合は給与決定・労働条件確定の正規の交渉団体になるので,上記の検討機関に島根大学教職員組合からも参加することを要求します。

I-5 大学執行部は,大学ホームページで大学をめぐる情勢や島根大学の各種委員会の検討状況を構成員に知らせる取り組みを強めているようですが,意識調査アンケートの結果によると,独立行政法人化問題について「わからない」という回答が多く見られます。学長は,全職員に対して独立行政法人化に関する情報の伝達が行われていると考えておられるか否か,お答えください。

I-6 島根大学教職員の情熱と英知を結集するためにも,学長が全構成員に向けて,この間の情勢の推移,当大学における方針と検討状況,今後のおおまかな日程と体制,を説明し,直接意見を聞く場を設けるよう要求します。

I-7 この間,マスコミによる大学学長・総長を対象とした調査が行われており,その中の設問に独立行政法人化に対する賛否を問うものが含まれております。学長はそれらに対してどう答えておられるか,ご返答ください。

II 定員削減問題

(1)大学の研究・教育体制の充実どころか,維持すらできない定員削減については平成111221日の庶務課長交渉でも,庶務課長自ら「本当に大学が運営できるのか」と発言されているので,思いは同じと考えます。定員削減については,組合は当然反対して運動してきましたが,大学として反対することが重要と考えます。アンケート結果では,「文部省の大学政策はおおむね正しい」を肯定するのは8%で,否定するのが57%です。また,「大学は文部省に積極的に意見を言うべきだ」は86%強の方が肯定されています。大学として定員削減に反対の意思表示をすることについて,学長はどういう見解をお持ちかお答えください。

(2)政府による5年間で5%削減の決定がなされる前から,学長による「人事ストップ」の方針が学部長会議を通じて学部におろされ,退官教官の補充という正規の人事すらストップされるという状況が生じました。私たちが調査した限りでは,その時点で人事ストップという措置をとった大学はありませんでした。また,評議員会での議論なしにとられた措置であるという点でも問題があったと考えます。このような措置をとられた根拠をお答えください。

(3)評議会では,島根大学の将来構想と定削の方法をあわせて検討すると言う方向性であると聞いておりますが,退官後の教官補充は学科にとって死活問題になりますので,できるだけ早い時期の方針確立が望まれます。どのような日程で,どの委員会で検討を進めるのかご返答ください。

III 大学改革・管理運営

島根大学も,全国の大学と同様にあるいはそれ以上に,大学改革の名のもとにさまざまな改革・改編に取り組んできましたが,独立行政法人化はもとより,より大きな改革の波が教育,研究および組織のあらゆる面に迫っております。現状を見ますと,該当委員会の委員の奮闘にもかかわらず,結果的に,教養教育をはじめとするこれまでの改革・改組について大学が自律的に定めた見直しの取り決めが守られず,かつ,大学改革の理念・目的に照らした真摯な点検評価を経ることなく,時間的余裕のない状況で大学審答申などによる提案をそのまま学部・学科に投げかけるという状況になっています。このため,議論が深まらないままに「改革」が先走っていると言わざるをえません。アンケートで85%の方が「島根大学には改革が必要だ」と答え,90%強の方が「大学は更なる教育体制の充実を目指すべきだ」と答えていることに示されているように,大学構成員の圧倒的多数が改革の必要性を認識し,よりよい大学を目指して努力しようとの意欲をもっています。しかし,理念抜きの視野の狭い議論が積み重ねられても,その結果が「民主的な議論にもとづく合意形成」によるものとは言えません。本来の大学像とはかけ離れつつある現実に対して,全大学構成員が願う大学を維持発展させるうえで,島根大学の管理運営力が問われているといえます。

この点で,学長のリーダーシップの強化とトップダウン方式の導入は,功罪あるため,アンケート結果でも「学長の権限強化とトップダウンの意思決定」について31%が肯定,33%が否定,36%が保留となっています。否定された方,および保留された方は,従来の「民主的な議論に基づく合意形成」を尊重し実質的な柔軟さを持ち味とした管理運営が,形式的硬直的な管理運営に向かう危惧を懸念しているためと考えます。混迷の時代に大学組織のリーダーに要請されるのは先見力,理論構成力および人心掌握力であり,その基盤は,リーダーの責任の自覚と,先験的な問題の提起,構成員に対する積極的かつ徹底した情報の開示および解決方針の提示,ならびに学内における自由かつ責任のある議論の保障であると考えます。上記設問に「肯定」と答えられた方は,このようなことを期待されていると考えます。これを具体化するシステムの構築は,新世紀における島根大学の管理運営の基本指針となりうるものであり,現在その指針を明確化することが肝要であると思われます。

そこで以下の諸点につき見解をお聞きします。

(1)島根大学における改革の最重要課題は何か,これまでの改革の進行状況を,島根大学の主体性・自律性という観点からどのように評価しておられるか,についてご返答ください。現状は,大学がその見識を示し,かつ,大学改革の方向性を明らかにするための自己評価が立ち後れ,答申あるいは第三者評価への対応という動きに傾斜した状況ではないでしょうか。

(2)大学審答申などで学長のリーダーシップが管理運営のあらゆる面において強調されていますが,学長は実際にリーダーシップを発揮すべき場面はいかなる場合とお考えでしょうか。リーダーシップを発揮する場合には,いかなる判断基準と資料をもって決定を行うのか,とりわけ島根大学の社会的役割,主体性あるいは自治という観点で重視する要素は何であるのか,についてお答えください。

(3)組織体制が改編されましたが,学長と副学長,運営諮問会議,事務局はどのように連携し機能しているのか,現状をご返答ください。

(4)執行機関に対する構成員の意見を汲み上げるシステムは,運営上の具体的な工夫を含め,昨年の交渉以来どのような状況か,ご返答ください。また,I-5で述べたように,大学ホームページで改革に関する情報を構成員に開示する方針のようですが,全構成員に情勢や大学の方針が伝わらない問題,また,構成員間での議論がなしえない問題について,どのような改善努力がなされていくのか,ご返答ください。

(5)大学全体の制度が変化しようとしていますが,それに対応できるように研修を行うことが必要であると思われます。大学改革へ対応できるようにするための職員の具体的な研修計画は決まっているのか,お答えください。

(6)(5)との関係で研修制度についてお聞きします。平成111221日の庶務課長交渉の際に,組合から,「現在の研修制度は形式的であったり,押しつけが多い。何人か出さなければいけないという人数合わせのために,断りたいような忙しい時期に行かされることもある。上からの押しつけでなく,下からの希望が反映されるような運用をお願いしたい」,「技術取得のための技官の研修希望や,必要であれば定員外職員の研修参加も認めてほしい」と言う要求に対し,庶務課長は「ご意見はもっともである。各部署に対しておろしていきたい。」と返答されています。この点で,庶務課長交渉以後,どのような改善がはかられたのかお答えください。

IV民主的大学運営

IV-1 予算配分問題

(1)大学審答申および文部省による予算配分方法の変更に伴い,当大学における予算配分方法の検討を財務委員会で行っていることは,各学部教授会等で報告されています。この中で,競争的かつ重点的予算配分方式を取り込むことが検討されています。アンケート結果では,49%が「競争的かつ重点的な予算配分方式が望ましい」を肯定していますが,後の半分の方は肯定していません(保留:33%,反対:18%)。これは,85%の方が「大学にはもっと予算が必要だ」と考えている中で,「競争的かつ重点的予算配分方式」が,90%以上の方が望む「大学のさらなる教育体制の充実」と「研究体制の充実」に有効に機能するのか否かについて疑問あるいは否定的見解を持っているためです。組合としては,大学の教育・研究体制の更なる充実を実現する予算配分方式の確立を要求しますが,学長として基盤的部分と競争的・重点的部分をいかにして両立させるお考えか,ご返答ください。

(2)「競争的・重点的予算配分」の部分に関しては,各プロジェクトの採択および不採択の理由を開示する必要があると考えます。この点につきまして,学長はどのような対処をお考えでしょうか。

(3)上記の観点から,本年度の学長裁量経費に提案されたプロジェクトについて,採択および不採択の理由を開示するよう要求いたします。

V 教職員の待遇改善の問題

(1)超過勤務について,昨年度の交渉では,改変を通じて事務効率化による負担軽減に努力するとの返答でしたが,軽減どころか部署によっては増加の現象も見られます。教職員のストレス・疲れ等による体調不良者が出る前に,改善を要求します。昨年度交渉以降,本件についての実態調査を行っているのか否か,改善のためにどのような方策を採られたかお答えください。

(2)業務日誌を記入するようになっていますが,業務日誌をつける目的を職員に告げているのか否か,お答えください。

(3)せっかくつけている業務日誌なので,これらのデータをまとめたものをすべて開示するよう要求いたします。この際,各課ごとに業務日誌を集計するのではなく,業務日誌をすべて集計してデータ化し,良いところも悪いところも開示するよう要求いたします。

(4)現在,パート職員のボーナスについては,支給対象とはなっていませんが,人事院交渉でも「大学として支給するのは一向にさしつかえない」との回答を頂いております。永年島根大学のために勤務しておられる定員外職員に対しての期末手当等に関してどのように考えられているのか,ご返答ください。

VI学内環境整備

VI−1学内治安問題

(1)近年,本学及びその周辺において治安が低下しつつあることは,誠に憂慮すべき状況です。以前緊急時の警察官の立ち入り等については,教授会で検討された経緯がありますが,最終的に大学側としてどのような対応をするかについては,構成員に周知されていないように思われます。学生側においても非常時の対処方法としては,平成12年度入学生用学生便覧に「学内で事故・事件に遭ったときは,速やかに学生課,守衛室に届け出てください」との一文しかなく,特に夜間の緊急事態に対して速やか,かつ適切な対処がとれない可能性が懸念されます。大多数の学生が携帯通信手段を有する現状において,直接警察等へ連絡する場合も十分あると考えられます。緊急事態が生じた場合,学生が適切な対応をとれるようなマニュアルの作成等の具体的な施策を含め,対処の方策についてお答えください。

(2)上記の件に関連しますが,最近学内各所に学内でのスケートボード等の迷惑行為を禁止する旨の看板が設置されました。構成員にとっては突然看板が設置されたとの認識がありますが,この看板設置にいたる経緯について説明してください。

VI-2 地震対策

(1)鳥取県西部から島根県東部を震源とする地震が続いており,なお継続するとの見解もあります。現在までのところ,本学では大きな被害が出ていませんが,万が一のための対策を検討しておくべきと考えます。学長の見解をお聞かせください。

VII セクハラ問題

セクシャル・ハラスメント防止委員会が設置され,本件の防止に有効に機能することが期待されます。この間何件の相談があったか,その後の対応状況について,ご返答ください。

VIII 組合室問題

昨年度,組合事務室を新学生会館に設置することを要求して拒否されました。大学として組合事務室を保証することを要求いたします。