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2002年11月14日
島根大学
学長 吉川通彦 殿
総務課長 伊藤嘉彦 殿
島根大学教職員組合
中央執行委員長 山本眞一
要求書
貴職におかれましては、教職員の労働環境の改善に不断の努力をいただきありがとうございます。
さて、本年4月19日の国立大学長会議の臨時総会において、「新しい『国立大学法人』像について(最終報告)」が従来の立場に反し、異例の挙手採択で容認されました。これを受けて、文部科学省は、来年1月の通常国会に「国立大学法人法案」を提出するために、法案策定作業を進めており、島根大学でも、法人化に向けた中期目標・計画案の策定、運営組織、会計・財務等の検討が進められています。また、来年10月には、本学と島根医科大学が統合され、島根新大学(仮称)に再編される予定です。さらには、教育学部の再編に向けて鳥取大学と協議中です。
このように本学は、この2年以内に大きく組織が改編されつつあり、島根大学教職員組合は、一連の大学改革に対する意見と要望、教職員の今後の身分・待遇、人権問題への対処などについて重要な諸事項を要求いたします。よろしくご対処いただきますようお願いいたします。
1.国立大学の法人化に関する問題
- 文部科学省は、来年1月の通常国会で「国立大学法人法案」を提出予定していますが、メリットよりもデメリットの方が多いと各方面から指摘がされています。法案が提出される前にもかかわらず、国立大学の「法人化」が既成事実のようにされていますが、地方国立大学である島根大学にとって、将来の運営基盤を大きく損なう可能性が強いことは明らかです。学長をはじめ学内関係者は、国大協などの会議の場で、「法人化」に対して反対の意を表明していただくよう、強く要求いたします。
- 島根大学教職員組合は、法人化問題について主に次のような問題があると認識していますが、学長の見解をお聞かせ下さい(引用は、「新しい『国立大学法人』像について(最終報告)」)。
- 前提3「自主性・自律性」では、「学問の府としての特性を踏まえた大学の自主性・自律立性を尊重する」(p.5)としていますが、「組織業務」「人事制度」「目標・評価」のどれを見ても、文部科学省の大学への干渉は現在よりもむしろ強くなっており、「自主性・自律性」とは明らかに矛盾しています。
- 最終報告では、「競争原理の導入」が随所で見られますが、大学という公共的な社会使命をもつ機関にはマイナスに働く可能性が強いと考えられます。例えば、「得意分野等に資源を重点的に投入」(p.10)することになれば、基礎的な研究が軽視される恐れがあり、「研究費をとるための研究」や流行に乗った研究志向に陥り、独創性に乏しくなる事態を生じかねません。また、ほとんどの教員は自身の研究や教育を自身の金儲けのために行っているわけではなく、給料に競争原理を導入させても、個人の研究教育を進展させることには無理があります。
- 法人化後の教職員の身分については、「非公務員型」が採用される見通しですが、現在の事務職員は公務員試験採用者であり、合理的理由を欠いた身分変更は職務に対する意欲の減退や将来への不安を募らせることになり、デメリットの可能性が強いと考えられ、現行通り「国家公務員」とすべきです。
- 「任期付教員」や「任期付職員」の採用を奨励していますが、現在の日本の大学では教員と職員ともに流動的な市場が形成されておらず、雇用の不安定化を招くだけです。
- 「中期目標・中期計画」の作成については、@で述べたとおり、大学の「自主性・自律性」を大きく減退させた内容になっています。目標・計画の策定に際して、文部科学大臣を経た手続きとなっており、実質的には文部科学官僚や新しく設置される「国立大学評価委員会(仮称)」の統制が強くなっています。諸外国では、こうした方式は見あたらず、むしろ政府が大学に対して直接関与することを強く制限しています。大学の自主性・自律性を認め、中期目標及び中期計画を大学自らが自発的に設定することを基本とすべきです。
- 「財務・会計制度」については、原資は国家予算から拠出されることになりますが、日本の教育研究経費は、対GDP比で見ると欧米諸国よりもかなり少なく(p.111)、欧米諸国並に充実させるべきです。
- 「長期借入金」については、附属病院などの借入金を「附属病院を有する大学からの拠出金をとりまとめ、確実に償還する」(pp.60-61)としていますが、返済による機能低下を防ぐためにも法人の償還負担を軽減又は、国が責任を持って返済すべきです。
2.島根医科大学との統合に関する問題
- 医科大学との統合まで1年を切り、準備に向けた作業が進められていますが、島根大学の教職員への負担は増加するのか、見通しをお聞かせ下さい。また、負担が増加すると考えられる場合、どのような手だてをお考えでしょうか。
- 附属病院が抱える長期借入金は100億円を超えると聞いていますが、システムがどのように償還するのかについてご説明下さい。また、この長期借入金は統合前に生じた借金であり、島根大学には全く関係のないものです。国が責任を持って返済するように文部科学省などに強く要望するようにお願いします。
- 附属病院の運営で、毎年10億円程度の赤字が計上されていると聞いていますが、この赤字が島根新大学の年間予算にどのような影響を与えると考えているのか、お聞かせ下さい。
- 昨年度の会見でも確認されていますが、島根大学では評議会にて教職員の任期制を導入しないことが決まっています。しかし、統合協議で島根医科大学は任期制の導入を求めていた経緯があるので、法人化後も新大学としては教職員への任期制を導入しないと確約をとっていただきたい。
3.教職員の待遇改善・労働環境に関する問題
- 超過勤務については、これまで何度も交渉で取り上げられてきましたが、事態は一向に改善されていません。学務一元化により事務効率が改善されるとしてきましたが、実際には医科大学との統合や法人化への対応などでむしろ事務量が増加し、定員も削減されているために、一人当たりの仕事負担量が大幅に増加しています。まず、大学当局として超過勤務の実態調査を実施していただくように要求します。その上で、超過勤務を削減する対策を検討・実施することを要求します。また、残業代の支給が適切に行われているのかについてもお聞かせ下さい。
- 事務職員の仕事量を減らすために、一部の職務をアウトソーシング化することを要求します。例えば、朝夕の建物の鍵の開閉を守衛や警備会社に委託するなどが考えられます。
- 昨年度もお聞きしましたが、「大学法人」への移行時期において、年度単位の契約である定員外職員の雇用の更新は確実に保証されるべきです。この点に関して、再度強く要望いたします。また、法人化後、現在の定員外職員を正規職員として採用できないか、お聞かせ下さい。
- 時間雇用職員に対してのボーナス支給を要求いたします。
- 再任用制度に関してお聞きします。組合としては再任用の希望者は原則として再任用すべきだと考えます。現在大学での対象者、および対象者の退職後再任用希望の有無について、その実態に関してお答え下さい。また、再任用制度に対する島根大学の運用方針をお答え下さい。
- 職場で働く教職員の待遇改善、女性の職場支援ということで、保育所を開設していただくように要求いたします。現在でも子育て中の女性は、公立や民間保育所に委託しながら勤務していますが、終了時間制限などで時間を気にしながら、思うように勤務できないという声もあります。近年、女性の登用などで採用人数も増えており、今後必要性は益々増大するものと思われるので、是非検討願いたい。
- 非常勤講師の旅費を満額支給するように要求いたします。昨年度は20%の支給とされ、不足分を埋め合わせるために、紹介した教員が自腹で夕食の招待などを行っている例がたくさん見られます。他大学の実態を調査していただき、改善策を検討していただくようお願いします。
4.人権に関する問題
- 本学では、1999年に、「島根大学セクシュアル・ハラスメントの防止等に関する規則」が策定され、セクシャル・ハラスメントへの対策が一定講じられていると評価しています。しかし、人権問題はこれ以外に、アカデミック・ハラスメントや差別問題などがあり、人権に関して包括的に対処する全学機関が必要と認識しています。現状では、保健管理センターの相談員や一部の教員などへ個別に相談するしかありません。そこで、人権に関する学内規則の策定と全学の機関の設置を早期に実現するように要求します。
- 具体的には、全学の機関として「人権相談所(仮称)」を設置し、常勤のカウンセラーと弁護士(弁護士は非常勤も可)が対応することにします。相談所には、相談窓口や調査委員会も設置することなど考えられます。
5.学内環境整備について
- 学内では分煙化が進められていますが、各建物の入り口などでは灰皿が設置されているために、入り口付近ではたばこ煙害が深刻化しています。受動喫煙を防止するためにも、吸煙機(換気扇)が設置された喫煙スペースを建物内に設け、それ以外では全学禁煙の措置を要求します(ただし、教官研究室は喫煙可能)。
- 近年、学内では変質者が度々出没し、恐喝事件も起こっています。また、図書館前ではスケートボートをやる者が出没し、騒音問題にもなっています。これらを防ぐためにも、警備員の巡回の回数を増やすなどの対応を要求します。
6.組合事務室の移転について
- 昨年度の会見や「組合事務室に関する要求書」(2002年4月3日)に対して、学長は、法文学部棟の改修に伴う組合事務室の移転について、学内にて配置することを確約されています。少なくとも現状に相当する事務室(広さ、設備等)を確保していただくように再度お願いするとともに、事務室の選定に際して組合からも意見を申し出る機会を設けていただくことを要求します。