1998年10月8日
島根大学
学長 北川泉殿
庶務課長 永野節殿
島根大学教職員組合
中央執行委員長 中山正吉
要求書
貴職におかれましては、不断の教職員の待遇改善の御努力をいただき、ありがとうございます。
さて、大学の職場においては、平常の教育研究や大学内の諸サービスに加え、近年の大学改革の流れに応じた諸改革が平行して行われており、事務官・教官共に非常に多忙な状況です。さらに定員削減などが加わり、労働条件の劣悪化に拍車がかかっています。
いうまでもなく、大学は重要な高等教育機関であり、そこで働く者は、その地位に相応しい待遇を与えられるべきです。大学はそこに学び働くものにとって、誇りの持てるそして快適にすごすことのできる環境である必要があります。
こういった観点から、以下の諸点を要求します。御検討いただき、よろしく対処いただきますようお願いします。
なお、これらの要求項目のうち、文書で回答が可能なものはそのようにしてください。その際には、庶務課長交渉の1週間前までにお願いします。
1. 大学審議会を中心とする大学改革について
大学審議会のまとめた『21世紀の大学像と今後の改革方策について(中間まとめ)』は、今後の島大の進路に重大な問題を持つものと考える。
「V 21世紀の大学像と今後の改革方策」の「4 責任ある意志決定と実行」の内容は、大学の機関を執行機関(学長、各学部長)と審議機関(評議会、各学部教授会)へと分離し、ごく少数でしかない執行機関の権限強化を目指すものであり、学内の民主主義的合意形成を著しく阻害し、大学の自治を揺るがす危険性が高いと認識している。以下の三点について明らかにされたい。
1) 執行機関の位置・構成、内容・対処する事項について。
(1) 副学長制、運営会議を導入するのか[『中間まとめ』の4の(1)の2)の@、A]。
(2) 学長、学部長は、今後、人事にどのように関与するのか[4の(1)の2)のB]。
2) 大学運営協議会を設置するのか[4の(1)の3)]。
3) 評議会、各学部教授会を『中間まとめ』のいうように、審議のみの機関とするのか[4の(1)の2)のA]。
また「5 多元的な評価システムの確立」の内容は、従来の自己評価から踏み出して外部評価の導入を義務化するものであり、評価システムとして、既存の機関(大学団体、学協会、大学基準協会)に加えて、「第三者機関」設置の必要性を提言している。従来の大学改革が、文部行政の枠内で財政誘導などの交換条件を課せられてきたことを鑑みると、誤った形での外部評価の導入は、効率を重視し、特定の研究のみに対して手厚い保護を加えることになりかねず、ひいては管理の強化、学問の自由の阻害、大学の自治の破壊に繋がりかねない。以下の二点について明らかにされたい。
1) 外部評価を導入するのか。
2) その場合にはどのような機関により、どのような形で行うのか。
2. 事務機構の一元化について
事務の効率化のための組織改編について、具体的な案が明らかにできる段階だと認識している。以下の3点について明らかにされたい。
1) 事務機構改革のスケジュールについて。
2) 人的配置の変更、事務内容の割り振りの変更等について。
3) 事務内容の簡素化など、上記項目に付随しておこなうことについて。
また、これらの改革による職員の労働負荷の軽減や学内サービスの改善などについて、その見通しを明らかにされたい。
3. 超勤の改善について
大学の運営にかかる事務処理において、職員の残業なくしてはたちゆかないのが現状である。さらに、その中でも「サービス残業」がひろく行われているのは公然の事実である。これをどのように改善していくのか明らかにされたい。
4. 非常勤職員の待遇改善について
現在、職員の4人に1人は非常勤職員であり、大学は非常勤職員の働きなくして運営できない状況である(資料参照)。しかし、この非常勤職員の待遇は他大学に比べて決して良好とは言えない。このことは職員個人の生活条件に関わるだけでなく、「全国の大学の中で島根大学はこの問題をどう考えるか」という「大学の考える正義」の問題にも関わっている。今回の交渉では、以下の2項目を要求するので、誠意をもって回答されたい。
1) 日々雇用職員への住居手当支給について
規則ではかなり以前より日々雇用職員に住居手当を支給することが可能となっている。組合の調査でも多くの大学で実際に支給されていることが確認されており、支給されていないのは島根大学のみかもしれないという懸念がある(資料参照)。前回の庶務課長交渉では、この問題について「再考を求めるというならばそうする」という回答を得ているが、再考の結果を示されたい。また、平成11年度予算より、日々雇用職員に住居手当を支給し、他大学並みの勤務条件を保証されたい。
2) 日々雇用職員(1980年3月30日以前からの在職者)の給与頭打ち問題について
規則では、日々雇用職員(1980年3月30日以前からの在職者)の給与について、行(一)2-4の頭打ち解消が可能となっている。組合の調査でもほとんどの大学でこの問題はすでに解消されている(資料参照)。前回の庶務課長交渉では「文部省と協議していきたい」という回答を得ているが、協議の結果と学内関係委員会における調整の状況をまず示されたい。また、平成11年度予算ではこの問題を解消し、他大学並みの勤務条件を保証されたい。
5. 勤勉手当支給基準の公開と公正な運用について
今年6月期の一時金の支給から、勤勉手当について成績率の適用が開始された。特に事務職員について、決定基準の詳細を明らかにされたい。また、12月期の支給における考え方についても明らかにされたい。
6. セクシャル・ハラスメントについて
セクシャル・ハラスメントは、男女が対等に、互いの人権を尊重しながら、働きやすい職場をつくっていくうえでの大きな問題である。各地の大学においても実際に問題が表面化している。今後、当大学においてもこの問題に積極的に取り組むことを求めるとともに、ここでは以下の5点を要求する。
1) 学内諸規則、窓口を整備すること。
2) 前項の規則、窓口はセクハラのみならず学内における人権問題一般を取り扱うものにすること。
3) これらの整備にあたっては、女性の声を反映させるよう、検討組織の構成に配慮すること。
4) 学内において、この問題に関するとくに男性教職員の意識の啓発につとめること。
5) 学生に対するセクハラ防止の対策をあわせて検討し、早急に態勢を整えること。
7. 学内福利厚生施設・環境整備について
1) 身障者用エレベーター・トイレ・スロープ等の設置・充実
本学では、身障者等が容易に利用できるエレベーター、トイレ等の基本施設の配備、車椅子でも移動できるスロープや段差地点での昇降機の設置、建物のバリアフリー設計の徹底が不十分である。これは身障者等が研究・教育活動、就労に参加することを事実上不可能ないしは極めて困難な状況におくことを意味する。組合としてはこうした現状の早期改善をもとめる。これらの現状をどう把握し、とのような改善計画を立てているか具体的に説明されたい。
2) 学内駐車場・自転車置き場の整備方針と安全確保
現在の本学の駐車・駐輪環境は、交通の便宜・安全の面で問題である。教職員は通勤に関して多大の負担を負い、 学内でいつ深刻な交通事故が発生してもおかしくない状況が現出している。また、せっかく造営した車イス用のスロープ等も、放置された自転車によって事実上使用不能な状態に陥る等、看過し難い派生問題も生じている。組合としてはこうした現状の早期改善を求める。これらの問題をどう認識しどう対応しているのか、具体的な施策を含め説明されたい。
3) 洋式トイレの整備・増設
トイレは建物全体・組織全体のイメージを左右する重要な施設であるが、学内にはいまだに旧態依然とした不衛生な印象を与えるトイレが多数残存している。また、身体機能や健康状態の万全でない教職員、学生等にとっては、近くに衛生的な洋式トイレが無いこと自体、その研究・就労・修学活動に対するハンディキャップとなっている。本学における洋式トイレの設置状況、今後の増設計画がいかなるものであるか具体的に説明されたい。
4) ゴミ処理問題への対応と方策
ゴミ処理問題においても、本学は常に地域に一つの模範を示さねばならない立場にあると考える。現在のゴミ処理施設の設置状況、安全・衛生管理、ゴミの分別、資源再利用リサイクル活動への協力体制等をいかに認識し、どう対応していくのか、具体的な施策を含め説明されたい。